仕事に伴う論文 論文2『戦略論』
論文2『戦略論』
中小企業診断士 本多 喜悦
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1.はじめに
私の戦略に対する考え方は基本的に、アンゾフに賛同するものである。彼は民間企業に勤め実務経験を積んでから、大学で教鞭をとった人である。それ故に私にとって非常に説得力がある。彼はもともと工学系の出身であったため、論文を図にするなどして理解を明確にしようと努力した人でもあった。
彼の考え方は「環境の変化」というパラメータに対し、与えられた条件下で企業がどのような戦略的行動にでるかどうかを考察したのである。このような理解のもとで、中小企業の経営者が環境変化にどのような戦略を持つべきかを述べたものである。
2.戦略とは
戦略とは、ある組織がその目的達成のために、与えられた条件あるいは予測した条件下で、選択する広い意味の計画といってよい。ゆえに、戦術は戦略に従属するもので戦術が良くても戦略が間違っていれば目的達成の確率は低下してしまう。
ゆえに、経営者は限られた経営資源を使ってどのような戦略計画を立てるかが、まず最初におこなう重要な仕事である。
3. 中小企業経営者は戦略計画を持っているか
私の経験では明示的に持っている人は少ない状態である。それは次のような事象から理解することができる
箇条的に列記する。
・事業理念を構築していない経営者が多く、全社員が精神的に依拠するものがない。換言すれば顧客に対しても当該会社はどんな社会貢献をして何を目指そうとしているのか伝えていないともいえる。
・社内および社外(市場や一般社会)とのコミュニケーションをあまり重視していない。
・目標を設定していないところが多く、また設定していても達成のためのシナリオを策定しておらずアプローチが分からない。
・経験的な経営手法で、過去の延長線上に明日があると思っている。また、それを望んでいる。
・長時間労働、低賃金で利益を出しているところが多く、高付加価値や高賃金で利益を出そうという意欲が少ない。
・日常のルーチンワークや雑用、会議や宴会等に時間がとられて、社長の時間管理が甘い。
・そのため一人で空想や想像力を働かす時間がとれないし、それに価値をおいていない。また、それに対する自由な議論をする場を設けようとしていない。
4.なぜ、中小企業経営者は戦略を持たないのか
箇条的に列記する。
・その重要性の認識がない。
・その方が楽だから。
・重要性は分かっているけれどスタッフが足りない。
・戦後日本は右肩上がりが普通で、今後もそれが普通で自分もそれに乗っていくことができるとと思っているから。
・戦略的思考は日本人の美意識や勤労意識にそぐわないから。
5.経営戦略決定の条件
企業は環境とどのような関係を持つかが戦略決定の最重要課題であるといえる。そのためには現在の自社の客観的状況をとらえること、環境条件がどのような状況かそして将来の自社の目標に対しどのようなシナリオを策定するかが重要となる。
冒頭に述べたように私はアンゾフに賛同するのでその例を簡単に紹介する。
彼は「環境の変化」を「乱気流」と比喩して例えばマーケティング活動と乱気流の水準を下表のようにまとめた。
顧客の圧力 臨界成功要因
表1 マーケティング活動の乱気流の水準
| 乱気流の水準 | 安定的 | 反応的 | 先行的 | 探求的 | 想像的 |
| 市場構造 | 独占 | 寡占 | 寡占 | 多数の競合者 | 新規大手競争者の参入 |
| なし | 弱小 | 強大 | 非常に強大 | 態度の変化 | |
| 成長率 | 緩慢で安定 | 増大又は安定 | 低下又は動揺 | 迅速又は動揺 | 不連続 |
| 業界のライフ | 成熟又は衰退の段階 | 初期の成長段階 | 後期の成長段階 | 新発売又は衰退の段階 | 急激な展開の段階 |
| 収益力 | 高い | 高い | 普通 | 低い | 低い |
| 製品の差別化 | なし | 低い | 普通 | 高い | 新技術に基づく商品 |
| 製品のライフサイクル | 長い | 長い | 短い | 短い | 短い |
| 新製品の頻度 | 非常に低い | 低い | 普通 | 高い | 高い新奇な製品 |
| 規模の経済 | 高い | 高い | 普通 | 低い | 低い |
| 資本集約度 | 高い | 高い | 普通 | 低い | 低い |
| 市場の統制 | 市場占有率、生産・原価 | 顧客のニーズに対する対応流通・サービス | ニーズと機会の余地 | 隠れたニーズの確認 |
また、経営特性とその行動の水準を次のようにまとめた。
表2 経営特性と乱気流の関係
| 行動の水準特性 | 安定的 | 反応的 | 先行的 | 探求的 | 創造的 |
| 問題解決 | 個々の具体的な引き金による試行錯誤 満足基準 | 個々の具体的な引き金による診断的 満足基準 | 先行的構造がはっきりしている 最適基準 | 先行的構造がはっきりしていない | 創造構造がはっきりしていない |
| 過程 | 組織的に従う | 問題の倫理に従う | |||
| リーダーシップの特性 | 保護的な動機 説得的 | 専門的な動機 説得的 | 成長の指示 鼓舞 | カリスマ的 官僚的 | 創造 カリスマ的 |
| 責任者グループの情報 | 過去の先例 | 過去の実績 | 過去のトレンドに基づく将来 | 将来の新発展と不確実性 | 可能な新しい将来 新しい並列 |
| 組織的構造 | 機能的 | 機能的 | 事業部別 | 多国籍的 マトリックス的 | 新しい冒険的事業 プロジェクト管理 |
| 環境監視 | なし | なし | 現状延長型の予測 | トレンド分析・技術、社会・人口予測 | 主要な不確実性 シナリオ 将来の発見 |
|
経営システム |
方針と手続きのマニュアル | 統制 資本予算の編成 目標による管理 | 長期計画作成 予算編成 | 戦略計画策定 PPBS | 冒険的事業経営 戦略的な焦点分析 ブレーンストミング |
| 経営科学 | 作業研究 設備・更新・仕事の不可の適正化 | 財務比率分析 資本投資分析 | オペレーションズリサーチ 取引分析のコンピューター化 | ケース別対応モデル 買収分析 インパクト法 デルファイ法 シナリオ 技術的、社会的、政治的な予測 | 創造工学 創造的な行動 革新的な行動 |
また、戦略的な風土と乱気流にについては下表のようにまとめている。
表3 戦略的風土
| 風土の水準特性 | 安定的 | 反応的 | 先行的 | 探求的 | 創造的 |
| 時間の見方 | 過去 | 現在 | 熟知した将来 | 未知の将来 | 新規な将来 |
| 代替案の範囲 | 過去の先例 | 過去の経験 | 現状延長的可能性 | 世界的な可能性 | 創造的な可能性 |
| 対内的・対外的 関心の焦点 | 内向的 | 内向的 | 内向的 外交的 | 外交的 | 外交的 |
| 変革の性向、変革に対する引き金となる戦略 | 危機 | 不満足な業績の推移 | 予想される業績の低下 | 変革に対する不断の探索 | 新奇な変革に対する不断の探索 |
| 受け入れられる変化の不連続性 | なし、現状維持 | 最小、現状からの新発展 | 部分的 | 不連続的 | 新奇的 |
| リスクの性向 | リスクに対する嫌悪 | 最小のリスク | 熟知したリスク | リスクと利得の未知のトレードオフ | 未知のリスクに対する選好 |
| 標語 | 「ボートを揺らすな」 | 「柳に風」 | 「先をよく読め」 | 「賭けを逃すな」 | 「未来を創れ」 |
| それぞれの風土水準で選好される部門 | 生産部門 会計部門 | 生産部門 財務統制部門 | マーケティング部門 計画部門 | 製品・市場・開発部門 多角化部門 | 研究部門 新しい冒険的事業担当部門 |
以上
