中小企業診断士 資格更新論文 平成25年度(2013年) テーマ1「新しい中小企業政策の動向」

中小企業診断士 資格更新論文

平成25年度(2013年) テーマ1「新しい中小企業政策の動向」

 

 

 

中小企業診断士 本多 喜悦

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平成25年度 テーマ1『新しい中小企業政策の動向』「ITを利用して業務に付加価値を与える」とは具体的にはどのようなことをいうのか、事例等を示して説明せよ

 

【1】「ITを利用して業務に付加価値を与える」とは具体的にはどのようなことをいうのか、事例等を示して説明せよ。

 (1)結論

 結論としては、ITの利用によってこれまでの業務の方法・進め方(業務プロセスの見直し、改善)や業務のつながり(マネジメントシステム)を変化させて、当該業務にインプットした経営資源に対して、そこからのアウトプットの成果がより生まれることを言う。

 そしてその結果、以前より収益性が高まり、ビジネスそのものの競争力強化や比較優位性が高まることをいう。

(2)具体例

事例1)例えば、経理プロセスを見てみる。

 1)IT利用前

 [1]取引の発生(ガソリンの購入)→[1]領収書の受領→[2]日計表の作成→[3]顧問税理士事務所への伝達→[4]税理士事務所での入力・処理→[5]試算表の受領

 2)ITの利用

ここでは、パソコンの導入および経理ソフトウエアの導入を想定すると次のようなプロセスとなる。

[1]取引の発生(ガソリンの購入)→[2領収書の受領→パソコンへの入力→[6]試算表の出力

 上例では、1)ITの利用によって利用前の[3]、[4]、[5]の業務がなくなって、自社で簡単に試算表まで作成することができるようになったと言える。

 これによって、各種資源(時間短縮、税理士事務所との契約金額交渉の余地が生まれる、経理人材の育成)の保有が出てきて、以前より成果が生み出されたということである。

 組織の中はたくさんの業務があり、それがそれぞれつながって一つのマネジメントシステムを構築している。

 ゆえに、ITを利用すると言うことは、当該業務を見直す契機となり、マネジメントシステム全体を見直し、全体最適へ近づくためのツールともなり得る。

事例2)営業プロセスについて見てみる。

 1)IT利用前

営業プロセスで使用するツールとしては次のようなものがある。

・パンフレット(紙媒体)

・営業日報の記入

・顧客台帳の管理等

 2)IT利用後

 ここでは、サーバーやパソコンの導入、LANの構築を想定すると次のようになる。

・ホームページの開設による24時間にわたって全世界に配信

・営業記録としてサーバーに登録することによって、情報の共有化や分析が容易になる。

・顧客台帳の管理が容易になり、顧客の購買動向や売れ筋等の分析が迅速に出来て、効果的な対策を打つことが出来るようになる。

 

【2】「規模の小さい企業ほどITの導入・活用がなされていない状況」に対して、どのようにITの導入・活用を進めたらよいか、中小企業診断士としての経験等を踏まえて述べよ。

 これについては、規模が小さい故にITに詳しい人材の不足、資金的余裕がないなどの理由が日常的業務から実感するが、今後は次のことを進めてITの導入・活用を支援していきたい。

(1)経営者への説明、啓蒙活動

 一番はやはり経営者からその気になってもらわなければならないので、これを常に意識している。

 聞く耳を持たない経営者もいるが、きっかけがあれば積極的な姿勢に変わって導入して活用を始めた経営者もいる。

 これまでの経験では、同規模の同業者が導入して利用したことによって、売上げや利益が増えたという、具体的な事例を示すと話に乗ってくる印象が強い。これは、やはり自社の業務プロセスにどのように当てはめれば、どうなるかということがイメージ化できるからであると思う。換言すれば、そこまで経営者からイメージしてもらえるような説明や啓蒙活動など、その経営者が反応する引き出しやツールをどのくらい持っているかであると思う。

 小規模の経営者と接するときはそのようなことを肝要であると思う。

(2)当該企業の業務プロセスの見極め

 これは、中小企業診断士のとしてのコミュニケーションスキルに次ぐ力量であると確信している。つまり、当該企業の今後を考えるにしても、当該企業の現状をどう見るかという支援の起点をどこにするかであるからである。そこが経営者の見方と大幅に違っていたり次元が違っていたりでは、せっかくの時間がお互いにあまり意味のない支援となってしまうからである。

 各種プロセスを見極め、どの業務にどのようなITを導入するか、そしてそのシナリオやロードマップが、中小企業診断士としてイメージとして出来上がるかある。これが妥当の範囲内に入っていなければならない。

 例えば、経営者がやっとパソコンやインターネットをかじりはじめたばかりの小規模企業に、EOSやERPのことを説明したとしても効果はないのである。

(3)実際にデモンストレーションを行う

 これは、経験上有意義であると思っている。私が使っているタブレットで色んな検索やアプリを紹介すると身を乗り出して関心を示してくる。こうなると次の話に持って行ける。

例えば、営業社員にこれを持たせてメールやクラウドの展開になる。すると貴社の業務にはこのようなことに使えるということになる。

 最近は、モバイルパソコンの持参も小規模企業に伺った時に実際のデモンストレーションが有効である。

 また、小規模企業の経営者は身近にそのような相談相手がいないので、以前は家電量販店に社長と一緒に出向いて、当社にとって妥当を思われたパソコンの選択を支援したこともあった。

(4)成功事例を挙げる

 これは、経営者にとって一番有効であったことは(1)で述べた通りである。中小企業診断士は各業種の成功事例を豊富に持つことである。

 小売業であればPOSレジから始まりポイントカード、EOSなどへと進化していく。製造業であれば、在庫管理、生産計画、工程管理、商品マスター、MRPなどへ進化していく。さらに社内システムからホームページの開設などインターネットを使ったWANやクラウドへとつながっていく。

 このような進化過程の事例を持っていれば、(2)で述べたように当該企業の状況を見極めて適切な支援ができる。

(5)公的施策を紹介する

IT化は規模の大小にかかわらず、活用次第で業務プロセスに付加価値を与えるので、公的機関も支援を強めている。下記の③で述べる支援の他にもIT化で使える施策が結構ある。“IT”という表現を使っていない施策でも下記のような施策を紹介して、IT化を支援することができる。

・中小企業・小規模事業者ビジネス創造等支援事業

・中小企業IT経営促進(IT経営力大賞、ITポータルサイトなど)

等も紹介して、経営者への動機付けを図る。

(6)IT専門家とつなぐ

自分の支援の範囲を超えるような案件については、専門家とつなぐことも重要である。IT分野は特殊専門性もあるので信頼できるIT専門家との人脈を構築しておくことが、日頃から重要である。

規模の小さい企業の社長は個性も強いことから、中小企業診断士は複数のIT専門家とのネットワークを構築して選択の幅を持つ必要がある。

(7)展示会への誘い

 時には、メーカーや業界が主催する展示会に誘ったりもする。色んなIT機械にふれたり、映し出される画面や印刷物を見ると違ってくる。企業経営者は、主催者の「これが出来る」という一方的な説明については聞いていない。経営者は「この問題を解決したい」とか「これが出来るか」という日常の現場から出てくる問いに対して関心を持つので、社長を誘って展示会へ出向くことも小規模企業のIT化へ有効であると思っている。

 

【3】中小企業のIT導入・活用を図るに際して、利用できる国の施策を解説せよ。

 次の施策がある。

(1)戦略的CIO育成支援事業

*趣旨:中小企業に対して、専門家を派遣して、経営戦略に基づくIT化計画の策定、その実施などCIO的な立場に立ったきめ細かなアドバイスを行うとともに、アドバイスを通じ、中小企業におけるITの人材育成を行うものである。

*対象となる方:部門間、企業間の連携など比較的高度なITシステムを導入することにより、 経営課題の解決・経営改革を計画的に実施しようとする中小企業者

*支援内容

 中小企業基盤整備機構が中小企業者に専門家を派遣する。専門家は、CIO候補 者が下記のプロセスを主体的に実施する際にアドバイスを行い、下記のような経営戦略に基づくIT 化や、CIO候補者の育成をサポートする。

・経営戦略の構築、IT 企画、移行・拡張、IT 戦略の構築

・システム開発、運用、全社的な情報管理の策定

*費用負担:16,700 円/人・日(専門家派遣に要する謝金の 1/3 相当額)

*派遣期間:支援内容により3ヶ月~1年間程度

*専門家:CIO経験者、中小企業診断士など中小企業のIT経営に関し、十分な知見と実績がある専門家

(2)IT活用促進資金

*趣旨:中小企業が情報化を進めるために必要な情報化投資を構成する設備等の取得にかかる設備資金、また、ソフトウエアの取得やディジタルコンテンツの製作、上映等にかかる運転資金の融資を行うものである。

*対象となる方:自社のIT関連機器の整備やソフトウェアの開発、デジタルコンテンツ関連設備の整備など、IT 化を考えている中小企業者の方

*支援内容(貸付利率)

・電子計算機等情報化を構成する設備等

・上記のうち基幹業務、電子商取引(電子入札含む)、 電子タグ、及びデジタルコンテンツに情報技術(IT)を活用するもの、運転資金のうち人材教育費用等

・その他情報化投資に必要な資金

*貸付限度額

・中小企業事業:7億2,000万円(うち長期運転資金2億5,000万円)

・国民生活事業:7,200万円(うち運転資金4,800万円)

*貸付期間

・設備資金 15年以内

・運転資金 5年以内(特に必要と認められる場合7年以内)

*窓口

・政府系金融機関の株式会社日本政策金融公庫が窓口となっている。